「エビ・カニの疑問50」の出版

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出版物のお知らせ。2017年9月28日刊行

日本甲殻類学会編

エビ・カニの疑問50 みんなが知りたいシリーズ5

成山堂書店

エビ・カニの仲間である甲殻類は水中で一番繁栄している生き物です。磯遊び等でも目にすることが多く、食用にも多く利用されている身近な生き物ですが、ミジンコからフジツボまで生態が多様で意外と知られていないことも多くあります。エビ・カニの色、カニの求愛ダンス、エビ・カニのアレルギー、シャコのパンチ力、生き物を乗っ取る(洗脳する)甲殻類、エビ・カニのおいしい茹で方など、素朴な疑問からあまり知られていない驚きの生態まで、エビ・カニの専門家がわかりやすく解説します。
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【はしがき】より
地球上には非常に多くの動物が棲んでいて,研究の進展とともに,まだまだ数多くの新種が見つかっています。2016 年に発行された無脊椎動物の大きな教科書であるInvertebrates(3rd Edition)( Richard C. Brusca, Wendy Moore, Stephen M.Shuster 著)によると,動物の総種数はおよそ150万種となっています。このうち節足動物門が125万7000種で全体の約82%を占めています。そのなかで一番多いのが昆虫で80万種以上が知られていて陸上で大変に繁栄しています。一方海洋においては,全海洋生物のおよそ20%が甲殻類で,6万7000種以上が知られ,大変に多様性の高い分類群です。つまり地球は,動物の種数からいえば節足動物の星であると言えましょう。
甲殻類と言うと食卓にのぼるエビやカニ,子どもの頃に遊んだザリガニ,金魚に食べさせるミジンコ,庭にいるダンゴムシなどを思い浮かべるかもしれませんが,大きさ,形態,生息場所,生態などは非常にさまざまです。大半の甲殻類は海洋に住んでおり海岸から深海まで分布しています。また,川や湖にいるものもいますし,陸上にもいます。他の生物に共生,寄生して暮らしているものもいます。自由に動き回るものもいますし,フジツボのように岩に固着して動かないものもいます。海洋の大半の甲殻類は変態するので,親と子では似ても似つかぬ形をしているものが多く,それらの幼生は,よく食用のシラス干しのなかにまぎれこんでいます。
この本では,こうした甲殻類の興味深い特徴を,最新の研究成果をもとに,気鋭の甲殻類学者が執筆しています。この本が甲殻類に対する興味を持つきっかけになれば幸いです。
なお,この本は編集を日本甲殻類学会が担当しています。この学会は甲殻類学の進歩と普及を図ることを目的として1961年に発足しました。年1回の大会を開き,専門の学術論文を掲載する英文の学会誌“Crustacean Research”,会員相互の意見や情報の交換,和文の研究報告などを掲載する“Cancer”を発行しています。会員は専門の研究者ばかりでなく,アマチュアも多く参加されています。この本を手にとられた方はぜひ,学会員になっていただき,大会に参加されたり,学会誌に投稿されたりすることを希望します。詳しくはホームページ(http://csjwebsite4.webnode.jp/)を参照してください(「日本甲殻類学会」で検索できます)。

平成29年8月
日本甲殻類学会会長
京都大学瀬戸臨海実験所
朝倉 彰

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