posted by marikok
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[標本採集] |
3月2~9日に、公開臨海実習「海産無脊椎動物分子系統学実習」が行われました。
この実習では、海洋生物を材料とするDNAを用いた分子系統学を学びます。標本採集、DNAの抽出・増幅・配列決定、系統樹の作成、そして結果の発表までが一通りの流れです。
今回は、予め採集しておいた軟体動物のベッコウガサおよびイボニシ、棘皮動物のナガウニ属複数種を用いました。これらの分類群には種内で形態変異があることが知られており、異なる形態を持つ個体間の遺伝的差異を調べます。
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[DNA抽出作業] |
エタノール固定した動物の筋肉や生殖巣の組織を取り出し、溶解して細胞内のDNAを抽出します。そのあと、PCR法によってミトコンドリアDNAのCOI領域を増幅します。 COI領域は、種の判別によく用いられており、系統樹作成のための比較データが多く使いやすい領域です。
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[増幅したDNAのバンド] |
目的の領域のDNAが増幅したかどうかは、アガロースゲル電気泳動で簡便に調べることができます。蛍光バンドの位置によって増幅したDNAの断片長を測り、COI領域の増幅を確認して、シークエンサーで塩基配列を決定します。
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[作成した系統樹の発表] |
塩基配列が決定したら、インターネットから近縁種の塩基配列データをダウンロードし、自分が解析した標本も含めた系統樹を作成します。この系統推定結果から、どの系統がどの形態になるのか、または形態は系統を反映しないのかを判定して、分類学的問題点を考察し、発表します。
この実習の流れは、実際の研究とほぼ同じ手順をとっており、問題の分類群にどのように分子系統学的にアプローチするかを学ぶことができます。