海産無脊椎動物分子系統学実習 岡西

研究員のMokanishiです。3/2から3/9にかけて、海産無脊椎動物分子系統学実習が行われました。

自ら野外で採取した無脊椎動物のDNAの抽出とPCRによる特定部位の増幅、およびその配列データを系統学的に解析してもらおうというものです。

一週間強という決して長くない期間で立派な系統解析ソルジャーになってもらなりません。私も心を鬼軍曹にして分子実験経験の少ない学生たちにハードな訓練を課しました。その八日間にわたる激闘の記録をご覧ください。

~3月2日~
全国津々浦々から12名の戦士たちが集いました。
到着当日の夜から実習準備です!
まずは今後の相棒となる白衣のサイズ合わせ。
ゴム手袋を装着。
近接型DNA混合兵器「ピペットマン」の使い方を体に刻み込んでもらいます。
~3月3日
いよいよ実習開始っっ!!!
まずは今回の解析ターゲット(今回はカサガイ、イボニシ、ウニ)
の解剖、および組織の採取です。
ウニの組織を取り出し中。
解剖中にとげが勢いよく飛んでくるため、
防御用特殊ゴーグルが欠かせません。
早くも自然が牙をむきます。
 中野分子系統学元帥によるカサガイの解剖のデモンストレーション。
一歩間違うとDNAは採れません。
みな真剣です!
 覚えたてのピペット操作。慎重に薬品を注入していきます。
一瞬の油断がコンタミ*を招きます
見えない敵との戦いに常に集中力が要求されます。
*他の生物のDNAが試料に混入する事
 「元帥、お願いいたします!」
重要試薬の注入は元帥自ら行います。
緊張の瞬間です。
いよいよPCR!
祈りを込め、サーマルサイクラーにDNAと試薬の混合液をセットします。 
ここで失敗すれば居残り実験もあり得ます。
PCR中の空き時間は休憩かって?
とんでもない!!
論文読みに決まってるじゃないですか!
甘えは許されません。 
~3月4日~
電気泳動が終了。PCRの結果は…?
この日、成功者と敗北者がきっかりと分かれました。
しかし研究の世界は非情なのです。
容赦なくシーケンス解読に外注しました。 
~3月5日~
外注の結果待ちの間は、みっちり先生方による講義です。
遊びではないのです。
ソルジャー達の頭は無脊椎動物に洗脳されていきます。 
~3月6日~
たまたま北大から標本調査にいらっしゃっていた柁原教官の虫」講義
「蠕虫」(ぜんちゅう)とは、細長く足のない生き物の総称です。
~3月7日~
この日は野外にでました。
絶好のお出かけ日和です。
しかしながら!
このころにはもはや完全にInvertebratize*
されたソルジャーたちの目に魚など映ろうはずがありません。
無心で海産無脊椎動物を追うのです。

*他動詞:「骨抜きにする、海産無脊椎動物研究者化する」の意。
今回の実習で生まれた新英単語です。

本州最南端の潮岬で束の間の休息。
物思いにふける元帥の背中。
今後の実習の行く末を見据えます。
 那智の滝につきました。
これはさすがに観こ馬鹿を言うんじゃない。
この石段です!
そう、実験は体力から!
この石段を登り降りして体力増強を図る
地獄の野外プログラムですよ!! 
帰ってきても研修は続きます。
夜遅くまでプランクトンの観察です。
そう、戦士たちに休む暇などないのだ…。
~3月8日~
 ついにシーケンスデータが返ってきました。
「これは読めている…のか?」
実験とは、完全にうまくいっていることの方が少ないものです。
夜遅くまで準備に勤しむソルジャー達。明日は発表会なのです。
本実習の集大成を発表するのです!
発表することに意義がある?いいえ、

失敗は許されません。

夜食です。宮崎総統お手製のパスタが、疲れ切った学生たちの心を癒します。 
よほど疲れたのでしょう。満腹になったソルジャーが一人また一人と倒れていきます。
そんな死屍累々の中、異彩を放つソルジャーが一人。
京都大学が生んだ鬼才、M西君です。
観察中に死んでしまった貝をハンマーで割って食べようという、
驚嘆すべきサバイバル力を発揮しています。
エースとしての自覚と責任が、彼の内なる魂を目覚めさせたようです。
*貝はきちんと下ゆで処理しています
~最終日(Xデイ)~
最後の準備に勤しむ学生たち。
一睡もしていない学生もちらほら。
果たしてその努力の成果は…? 
トップバッターはカサガイの分子系統です。
元帥のご専門。うまく説明できるか!? 
イボニシ(巻貝)の分子系統です。
今回最もPCRの成功率が低く、発表が危ぶまれましたが、
なんとかうまくまとめてくれました。 
最後はナガウニ類の分子系統です。
散々やりつくされた分野かと思っていましたが、
面白そうな発見もありました。
今後につながる成果です。 
質疑応答の一コマ。矢のような質問にも臆することなく、堂々と応答します。
見違えるように成長しました! 
いよいよ中野元帥の最後のお言葉です。
みな、この一週間の訓練を思い返していることでしょう。
血と汗と涙に彩られた厳しい実習によく耐えました。 
最後の集合写真。
実習(訓練)から解放された学生たちの顔に、笑顔が灯りました。
今後、系統解析ソルジャーの卵たちは各地に戻り得た技術を後世に伝えていってくれることでしょう。決して楽な一週間ではなかったかもしれませんが、その経験がやがて芽を出し、実を結ぶことをスタッフ一同願っています。

報告は以上です…

…しかし…。

これで本当に全てでしょうか?何かを忘れているような気がするのです。私は、本当に私は厳しい訓練を課せたのでしょうか?

私は…。私は…ウッ!!!頭がッ!!!
(posted by Mokanishi the General)
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