京都大学臨海実習第1部(その1)

posted by marikok

8月2~8日に京都大学の臨海実習第1部が行われました。
この実習では、様々な海岸におもむき、また様々な方法で海の生物を採集し、同定して生物相や多様度を比較します。

初日のオリエンテーションと朝倉先生の講義では、実験所の使い方や海洋生物の基礎知識を学びます。

2日目から本格的に実習が始まります。まずは実験所周辺の番所崎の海岸から。このように大きく深いタイドプールでは、造礁性サンゴ類がみられます。そのサンゴに、カラフルなカンザシゴカイがすんでいることもあります。

潮間帯では、足元に生物がびっしりと付着しています。岩の隙間も少し掘り返すと、意外な生物が隠れていたり…。
これは漁具の浮きが砂浜に漂着したもの。その表面にカルエボシが多数付着しています。これはかなり乾燥していたので、漂着してから時間がたっていたもののようです。生きていれば、フジツボなどの近縁種と比較してみるのもいいですね。
ホンナガウニ(左)とムラサキウニ(右)。違いが判るでしょうか?殻が楕円形のナガウニ類は、2018年1~2月の寒波で番所崎ではかなり死滅してしまいましたが、小さな個体は少しずつ見かけるようになってきています。
実習室に帰ると仕分けと同定作業です。たくさんの図鑑を使って調べます。同じ種類でも、図鑑によって写真が違うので、種内のバリエーションも考慮できる場合があります。番所崎では9動物門85種が採集されました。
実習生持参の図鑑「日本のウミウシ」。彼は小さなウミウシを多数発見し、この図鑑で同定していました(よくみたらTシャツもウミウシ!)。ちなみに、この実習中に本書第2版が届きました。たくさんのウミウシ種が掲載されており、これを見れば大抵はどの種かわかりそうですが、まだ学名が決まっていない種も少なくなく、今後の研究が待たれます。
番所崎産ハマダンゴムシ(左)と実験所構内産オカダンゴムシ(右)と借り物のバンダイ産だんごむし(上)。ハマダンゴムシには、グレーだけではなく、黄色やピンクっぽいものもいますね。ハマダンゴムシは昼間砂中に潜っていますが、掘り出して砂の上に置くと熱いためか逃げ回ってしまうので、全く写真を撮れず野外で撮るのは断念しました。
3日目は河口にやってきました。時間的に潮がまだひいていませんが、そのためか干潮時に岩の下の巣穴に隠れているカニが出てきていたり、普段あまり採集されない河口にすむ魚類や、流されてきたクシクラゲが採れたりしました。
お次は干潟。ヤビーポンプ、クラムガン、スコップなどで、泥中の生物を採取します。水の流れている澪筋やその付近、干上がっているところ、転石の裏、ヨシ原の中、ハマボウの根元など、のっぺりして見える干潟でも様々な生息場所があります。
今日は天気も良く、ヤマトオサガニやチゴガニなどが出てきていました。ヤマトオサガニとヒメヤマトオサガニ、求愛ダンスの違いを観察したいのですが、警戒心が強くて人が近寄るとなかなか踊ってくれません。

採集できたクシクラゲ(カブトクラゲの成体とフウセンクラゲ型幼生)の体制を観察しているところ。横から光を当てると、大型の繊毛が動きに合わせてきらきらと光り、きれいです。有櫛動物は確実に採れるとわけではないので、今回はラッキーでした。

今日は6門39種観察できました。河口にすむハゼが6種も採れており、初めて見た種もあってわくわくしました!実習生の採集努力の賜物です。

京都大学臨海実習第1部(その2)に続く。

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