瀬戸臨海実験所は平成28年度より教育関係共同利用拠点(事業名:黒潮海域における海洋生物の自然史科学に関するフィールド教育共同利用拠点)第2期として文部科学省から認定され、各種共同利用事業を進めています。 この教育拠点共同研究員として、当実験所をフィールドワークの拠点として活用されている安岡法子さん(奈良女子大学大学院)が、論文を出版されました。
Yasuoka N, Yusa Y (2017) Effects of a crustacean parasite and hyperparasite on the Japanese spiny oyster Saccostrea kegaki, Marine Biology, Springer, 164:217.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00227-017-3250-6
ケガキに寄生するクロピンノという種類のカクレガニにさらに寄生するヤドリムシ(エビヤドリムシ科の等脚類)の論文です。
おめでとうございます!
以下は安岡さんによる解説です。
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この研究は、和歌山県白浜町で行ったもので、対象としたヤドリムシも過去に瀬戸臨海実験所の教員であった椎野先生が白浜で記載された種です。ということで、とても白浜に縁のある研究です。実験所の目の前にある番所崎がサンプリング地点です。
クロピンノのメスは基本的に牡蠣の中にいて、オスは自由生活をしています。オスのカニは牡蠣を出入りしなきゃいけないので、メスよりも小さくて泳げるように歩脚に遊泳毛を持っています。
ところが、ヤドリムシに寄生されると、オスのカニがメスのように巨大化してしまい、遊泳毛がなくなり、牡蠣の中に閉じ込められてしまうようです。
閉じ込められたオスのカニは、普通のカニと同様に牡蠣の繁殖や身入りに悪影響を与えます。
ヤドリムシはカニの寄生率を上昇させて、牡蠣への悪影響を増やす効果がある、といえます。
このように、寄生者にさらに寄生する生き物を超寄生者といい、超寄生が寄生者を通して宿主に間接的に影響を与えることは今までも知られていました。敵の敵は味方、という考え方で、従来、超寄生者は寄生者を通して宿主に正の影響を与えると言われてきました。今回の研究は、超寄生が間接的に負の影響を宿主に与えうる、と海洋生態系において初めて示したものです!敵の敵は味方とは限らない、ということですね。