京大臨海実習第3部・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」(20170314-19)その1

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既に夏が終わり,季節はすっかり秋になってしまいましたが,せとブロは今年の3月に行われた実習について投稿していきます.遅くなってごめんなさい.そろそろ来年3月の実習への参加募集が始まります.この記事が参考になりますように.

3/14-19の日程で,京大理学部「臨海実習第3部」・公開臨海実習「藻類と海浜植物の系統と進化」が行われました.例年は受講者が多いこの実習ですが,今年は6人のみで実施しました.

初日はオリエンテーションとして,自己紹介からスタートです.6人しかいないので,1人あたりちょっと長めの紹介をしてもらいました.

自己紹介の後は所内の見学です.写真の角度が良かったのか,とっても広くてキレイな廊下に見えますね.いや,実際広くてキレイですヨ.

この実習を担当してくださる福井県大の神谷先生から,海藻についての基本的な講義を受けて初日は終了です.これくらいの規模の講義も,距離が近くていいですね.

2日目は藻類の世代交代についての講義からスタートです.海藻の多くは、染色体数が半分になる配偶体と2倍体になる胞子体の間で世代交代を行います.

前日に採集しておいたアオサから何やら緑色の靄が出てきました.それを顕微鏡で観察してみましょう.

ガラスボールの縁にたまった緑色の部分です.それを拡大すると右の写真のようになります.これは遊走子といって鞭毛をつかって泳ぐことができます.遊走子が岩場や網に着底すると,新しいアオサへと成長していきます.

次に藻類の切片を作っていきます.神谷先生の熟練の技をご覧ください.

実習生もキレイな切片を作るべく,何度もチャレンジしていました.もちろん観察とスケッチも必要です.

うまくいくと,こんな切片が観察できます.1層の細胞が見事に観察できました.1層ということは…,そう,アレですね.是非実習で体験してください(宣伝).

午後からは海岸で実物を採集・観察しました.実験所の眼前には,干潮時になると広大なタイドプールが出現します.

足下には,このような色とりどりの海藻が繁茂していました.左はハナフノリとフクロフノリ,右はカゴメノリとみなさんおなじみのヒジキです.

ところでみんなが厚手のカッパを着込んでいることに気づきましたか?そうです,この日は気温が低いうえに風が強く,雨も降りだす始末です.野外採集にとっての悪条件がそろってしまいました.

それでも実習生はどんどん採集を続けます.あたらしい海藻を見つけては,採集してメモをとるの繰り返しです.

さすがに寒すぎて,岩陰に避難する場面も…

暖かいラボに戻ったら,採集した海藻の同定が始まります. 図鑑や採集時の解説を参考にして海藻の特徴を覚えてもらいます.

同定が済んだ海藻は,ケント紙の上に広げて押し葉標本にします.乾燥するまで手間も時間もかかりますが,写真のカゴメノリやケイギスなどはとてもきれいな標本となります.標本としての価値ももちろんですが,実習の良い記念になるでしょう.

3日目は海藻の水平分布と垂直分布など,生態に関する講義から始まりました.午後からは実際にタイドプール内の分布状況を観察することになります.頭も体もフル活用.

干潮までは時間があるので,ヒトエグサとアミジグサを使って表面観と断面観の観察をしてもらいました.

午後になり,いよいよタイドプール内の海藻分布調査が始まりました.調査するタイドプールの大きさや深さ,海面からの距離,方角など様々な要素によって生育する海藻の種類が変わってくるのです.

タイドプールの海水を掻き出して,隅々まで調べます.選んだタイドプールの大きさや深さは体力の消耗率にも影響します….

タイドプールの内部に生えている海藻も調べます.昨日学んだ海藻の知識が早速役に立つ場面です.逆に,覚えていないとヒドイ目にあうでしょう….

ラボに戻ってからは,班ごとに発表用の資料作成です.性質の異なる2つのタイドプール間に見られる「違い」とその「理由」について考察していきます.

このようなタイドプールの平面図(写真)と断面図を用意し,発表にもちいます.どこにどのような種類が生育しているかが一目瞭然です.
その2に続きます.
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