瀬戸臨海実験所は平成23年度より教育関係共同利用拠点(事業名:黒潮海域における海洋生物の自然史科学に関するフィールド教育共同利用拠点)として文部科学省から認定され、各種共同利用事業を進めています。 この教育拠点共同研究員として、当実験所をフィールドワークの拠点として活用されていた中山真理子さん(当時 奈良女子大学)が、論文を発表されました。
おめでとうございます!
中山真理子さんは、干潟の稀少オサガニ類チゴイワガニの生活史を研究されていました。
チゴイワガニIlyograpsus nodulosus(Sakai, 1983)はオサガニ科に属する日本固有種で、記録される地域は西日本の一部に限られており、準絶滅危惧種とされています。本研究では、和歌山県田辺市新庄町内之浦の泥干潟下縁部で年間を通した採集により、定期的にチゴイワガニの野外集団の構造を追跡することで、繁殖、成長、寿命、性比、体サイズの性的二型などを明らかにしました。また、野外で採集した個体を室内の水槽で観察することにより、摂餌行動、造穴行動、配偶行動、闘争行動などの特徴を明らかにしました。
また配偶行動や闘争行動の室内実験より、複数雄間での雌をめぐっての競争では、雄の体サイズは必ずしも 有効ではなく、これが本種の雌に偏った体サイズの性的2型と関連していることを示しました。
Nakayama, M., & Wada, K. (2015). Effect of size on fighting and mating in a brachyuran crab with female-biased size dimoprohism, Ilyograpsus nodulosus (Macrophthalmidae). Journal of Crustacean Biology, 35(6), 763-767, 2015.
http://booksandjournals.brillonline.com/content/journals/10.1163/1937240x-00002380
Nakayama, M. & Wada, K. (2015) Life history and behavior of a rare brackish-water crab, Ilyograpsus nodulosus (Sakai, 1983) (Macrophthalmidae). Crustacean Research, 44: 11-19.
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/crustacea