posted by AA
シリーズの3回目です。
The Crustacean Society (TCS) and the Latin American Association of Carcinology (ALCARCINUS) Summer Meeting. San José, Costa Rica. July 2013
![]() |
Copyright: TCS & ALCARCIUS Summer Meeting |
コスタリカで開催された甲殻類の国際的な学会である。これはThe Crustacean Society と、ラテンアメリカの国々の甲殻類学者の統合的学会であるALCARCINUSのジョイント学会である。36ヶ国から、およそ200名の参加があった。私自身もこの大会のScientific Committeeのメンバーとして、プログラムの作成に関わってきた。
![]() |
Copyright TCS & ALCARCIUS Summer Meeting |
このブログで前にも述べたがTCSの大会は年2回開催されており、夏の大会は世界中をめぐり、冬は必ずアメリカで開催されている。私がPresidentであった時代に、私は2つの方針を打ち出した。第一は夏の大会は、その開かれる場所にある甲殻類学の学会と合同で行うことにより、より親密で豊かなコミュニケーション関係を構築することである。またも第二は、TCSの中にそれらの学会を結ぶLiaison Officerを置き、学会の相互交流のかなめとして機能させることである。
なお余談ながら夏の大会はSummer Meetingとよぶが、南半球で開催される場合には10年ほど前からMid-year Meetingとよぶ。というのも夏の大会は通常、7月か8月に開催されるが、これは南半球の冬であるからで、かと言ってそれをWinter Meetingと言ってしまうと、アメリカで1月に開かれるWinter Meetingと名称が重複してしまうからである。
それで思い出すのは2000年にオーストラリアのメルボルンで開かれたSummer Meetingで、その大会委員長であったMuseum Victoria のDr. Gary Poore氏が開会式の挨拶の冒頭で、「この大会は信じられないことにsummer meetingである!」と述べていたことである。会場は大爆笑していたが、私自身はとっさに何を言っているかがわからなかったが、考えてみると南半球では冬であるわけである。しかしそのように考えてみると、世界は北半球の論理で動いている部分と言うのが、多分にあるのかもしれない。
上記の第二の方針については、リエゾンする学会とLiaison Officer は次のような方々にお願いしている。中国甲殻類学会(相建海)、International Association of Astacology (川井唯史)、The Brazilian Crustacean Society (Fernando Mantelatto)、The World Association of Copepodologists (Rony J. Huys)、International Research Group on Ostracoda (Renate Matzke-Karasz)、ALCARCINU(Michel Hendrickx)、Colloquium Crustacea Decapoda Mediterranea (Enrique Macpherson)、Terrestrial Isopod Biologists Group (Jasna Strus)、Large Branchiopod Working Group (Christopher Rogers)、Amphipod Group (Wim Vader)、German Carcinologist Group (Sebastian Klaus)。
さて、このコスタリカの学会であるが、先に述べた第一の方針により、表記の2つの合同学会となっている。ALCARCINUSの会長のMichel Hendrickxは、長くTCSの役員でもあったので、私を含めTCSの役員の人たちにはお馴染みの方である。大変に精力的に研究を進めていて、ラテンアメリカの巨人、という感じの方である(体つきも大柄) 。
またALCARCINUS の副会長のFernando Mantellato さんは、ブラジル甲殻類学会の会長も務められた方で、TCSの役員でもあり、私は若いころからよく顔を合わせている。彼は若いころは、映画俳優のアラン・ドロンばりの美男子であったが(と言って今の若い人は、わかるか?)、最近はやや恰幅がよくなり顔も丸くなり、「昔はアランドロンのようだったかな?」という感じである。
私と彼とアメリカのRafael Lemaitre 氏とChris Tudge氏とで、「Biology of Anomura」シリーズのシンポジウムをずっとやっている。これはこの4名がみなヤドカリ類を材料として研究しているからで、シンポジウムは第一回目をオーストラリアのメルボルン、第二回目をイギリスのグラスゴー、第三回目を日本の東京海洋大学で開催している。またそのProceedingsは、それぞれMuseum VictoriaのJournal、日本甲殻類学会、ブラジル甲殻類学会から出版されている。
コスタリカの学会で得たものと言えば、何と言ってもラテン・アメリカの研究者と多く交流できたことであろう。若い研究者の中には、英語がかなりたどたどしい人もいて、発表は英語かスペイン語のどちらでも良いことになっていたため、日程の後半はスペイン語の発表もかなりあった。いわゆる分類学や生態学などの自然史系の学問が、ここでもかなりさかんなことが見てとれた。
![]() |
大会委員長のIngo S. Wehrtmannさん |
この学会の大会委員長であるIngo S. Wehrtmannさん(Universidad de Costa Rica)は、2009年のTCS東京大会にて、1つのシンポジウムを企画してくださった方である。その時に、TCS Summer Meetingをコスタリカで開催したい、と提案されてきた。それ以来の再会であり、まことに感慨深いものがあった。