10月21日午後に東海大学海洋学部と日本甲殻類学会の共催シンポジウム「駿河湾におけるサクラエビの資源生物学」が開催され、全5題の講演が行われました。
地元漁業者、水産業関係者など会員、研究者以外の方々にも多数ご参加いただきました。
企画趣旨
サクラエビは日本国内では駿河湾でのみ漁獲される同湾の象徴的な水産資源である。本種を対象にした漁業は1894年に始まっており、利用の歴史は比較的新しい。その研究の基礎は中沢殻一によってつくられ、その後、東京海洋大学名誉教授の大森 信博士、静岡県水産試験場(現 静岡県水産技術センター)の歴代の担当者によって、分類、発生、成長、産卵、漁場形成などの生物学、水産学上の重要な知見が明らかにされてきた。また、駿河湾のサクラエビ漁業には、水揚げした漁獲物の代金を平等に配分するプール制が自主的に導入されており、資源管理方漁業の成功例として知られている。本種の漁獲量は大きな年変動を示し、好漁、不漁を繰り返してきたが、近年は歴史的に低い水準で推移しており、中でも2018年の春漁は記録的な不漁となった。静岡県桜えび漁業組合は、漁獲圧を低減させるため、さらなる自主規制を検討しているが、サクラエビの資源動態のメカニズムが明らかでないことから、試行錯誤的に規制せざるをえない。そのため、サクラエビの資源量を推定するとともに、資源の変動要因を明らかにすること、そしてそれらの科学的根拠に基づいた合理的な資源管理が求められる。本種の漁獲量の低迷は、漁業者、水産加工業者はもとより、静岡県民、静岡市民にとっても重大な関心事である。そこで、東海大学清水キャンパスで開催される第56回日本甲殻類学会に合わせて、一般公開のシンポジウムを開催し、東海大学と静岡県によって行われているサクラエビの資源学、生態学に関する研究を紹介するとともに、産官学が連携してサクラエビ漁業の種々の問題に取り組む契機としたい。
企画:鈴木伸洋(東海大海洋)・土井 航(鹿児島大水産)
共催:日本甲殻類学会・東海大学海洋学部
日時:2018年10月21日(日)13:55~16:45
会場:東海大学海洋学部8号館8205教室
企画趣旨説明 土井 航(鹿児島大水産)
サクラエビの漁獲量とVPAによる資源量の推移
飯塚貴之・福井 篤(東海大・海洋)
資源量推定手法の開発について
小林憲一(静岡水技研)
生化学マーカーを利用したサクラエビLucensosergia lucensの栄養生態多様性の解明
見崎日向子(東海大院海洋)・吉川 尚・平塚聖一(東海大海洋)・鷲山裕史・池田卓摩(静岡水技研)・西川 淳(東海大海洋)
外部形態・組織観察によるサクラエビの成熟サイズの推定
土井 航(鹿児島大水産)・鈴木伸洋(東海大海洋)
組織観察から見た駿河湾におけるサクラエビの産卵生態と漁業
鈴木伸洋(東海大海洋)・土井 航(鹿児島大水産)・小林憲一(静岡水技研)
総合討論:今回のシンポジウムを踏まえて,今後のサクラエビ漁業のあり方を考える:
鈴木伸洋・石川智士(東海大海洋)