この教育拠点共同研究員として、当実験所をフィールドワークの拠点として活用されてきた和田葉子さん(当時奈良女子大学大学院生)が、論文を出版されました。 なんとEcology !
おめでとうございます。
和田葉子さんは現在、奈良女子大学 理系女性教育開発共同機構(Collaborative Organization for Research in women’s Education of Science, Technology, Engineering, and Mathematics) の、特任助教をされています。
http://www.nara-wu.ac.jp/core/
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Yoko Wada, Keiji Iwasaki, Takashi Y. Ida, and Yoichi Yusa (2017)
Roles of the seasonal dynamics of ecosystem components in fluctuating indirect interactions on a rocky shore. Ecology DOI: 10.1002/ecy.1743.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ecy.1743/abstract
自然界でもっとも複雑な系のひとつである生態系の構造を理解することは、基礎と応用の両面において重要である。生態系において、ある生物種は、他種と直接的にだけでなく間接的にも効果を及ぼし合っている。このような間接効果には、捕食者が被食者の密度変化を介して植物などの資源に影響する密度媒介型と、被食者の行動や形態といった形質の変化を介して資源に影響する形質媒介型の2タイプが存在する。なかでも、形質媒介型間接効果は、広範囲かつ迅速に広がり、被食者の生涯を通して資源に影響しうることから、近年多くの研究において重視されている。しかしこれまで、間接効果の大きさは短期的に評価されたものが多く、長期的な間接効果の変動や、そこに生態系構成種の季節性がどのように影響するかなどについてはほとんど明らかにされていなかった。
本研究では、海洋生態系における間接効果の長期的な役割を明らかにするため、岩礁潮間帯に存在する肉食性巻貝―藻食性笠貝-藻類からなる系において、間接効果の長期変動とそれによる生態系の動態を明らかにする実験を行った。その結果、被食圧の季節変動や、秋から始まる被食者の新規加入個体の定着などにより、間接効果の強さが大きく変動すること、密度媒介型よりも形質媒介型間接効果の方が1カ月近く長続きすることが分かった。しかし、いずれの間接効果も冬には弱まり、春になると、施した実験処理に関わらず、同じような藻類の群集構造となることが示された。本研究により、野外で長期間、間接効果を評価することが、生態系の構造や動態を明らかにするうえで重要であることが明らかとなった。