気仙沼でのポケゼミ その1

 8月20日から4泊5日で、気仙沼でポケゼミをしてきました。今回の参加者は5名でしたが、さらに昨年同様のシビックフォースプログラムの学生さん1名、また昨年このポケゼミに参加していた学生さん1名、同様のシビックフォースプログラムの学生さん1名を加え、にぎやかに、毎日を過ごしました。
今年のトピックはなんといっても、舞根に「森里海研究所」がオープンしたことです。
 この研究所はNPO法人「森は海の恋人」と京都大学フィールド科学教育研究センターが、日本財団の助成を受けて建設されたものです。総床面積約490㎡、一階には作業施設、二階には研究スペースや会議室を備えた研究・教育の拠点です。『森は海の恋人運動』『森里海連環学』の理念のもと、次の世代を担う子どもたちを対象とした各種事業を実施するほか、国内外の研究者・学生が集う施設となることが期待されています。この4月にオープンし、利用者はすでにのべ600名を越えています。
 竣工式の様子が京大フィールド研のホームページに掲載されています。



第一日目の8月20日は、一ノ関から舞根の研究所へ。畠山さんにご挨拶したあと、近くの湿地に案内していただきました。ここには大震災後、多数の貴重な動植物がみられるようになったそうです。

湿地にて説明される畠山重篤さん。Copyright NPO法人 森は海の恋人
 ポケゼミ二日目の8月21日は、まずは畠山信さんに研究所を案内していただきました。

舞根森里海研究所の全景
舞根森里海研究所の玄関部分
舞根森里海研究所の玄関にある関係各団体のロゴ。一番右にわがフィールド研のロゴも!



研究所一階部分の作業室。畠山信さんから説明を受ける。右に見えている機械は「全自動耳吊機」(発音は、じどうみみつりき)といい、ホタテガニの貝殻に穴をあけて養殖イイカダにつるすようにするための機械。耳というのは、ホタテガイの蝶番の近くにある2つの飛び出ている部分をさし、ここにひもを通すための穴をあけるのだそうです。ネーミングが秀逸な感じがするのは、私だけでしょうか? たぶん、「じどう」という言葉と、「みみつり」という言葉が、絶妙なハーモニーを醸し出しているのだと思います。
研究所二階の実験室。高級な顕微鏡がならぶ。明るく清潔で、とても使いやすそうな実験室です。わたしたちの滞在中には、京都大学を出て北海道大学で博士号を取得した植物プランクトンの研究者の方が、長期滞在して研究を行っていました。
研究所二階の図書室。畠山重篤さんの著作、フィールド図鑑、自然保護関連の図書などがおいてあります。私が解説文を担当している「杉浦千里博物画集」も置いてありました。これには実は不思議な縁があるもので、畠山さんがある新聞の書評欄を連載で担当されており、この本が出版された直後に出版社からこの本が畠山さんのところにまわってきたので、それを書評欄で取り上げていただいたのです。これはまったくの偶然なのですが、そののち、このような形で畠山さんとご縁があろうとは、夢にも思っていませんでした。
研究所のオリジナルグッズ。かわいらしいデザインのマグカップや絵葉書がおいてあります。ここのスタッフのオリジナルだそうです。
研究所の前に新造船された和船「あずさ丸」がありました。和船は大変に珍しいです。畠山さんのところには、東日本大震災の前には2艘の和船があったそうです。しかし津波が押し寄せてきて、波にさらわれてしまいました。その後、発見された時には、ほとんど焼失した状態で発見されたそうです。海をなりわいにしている人にとっては、船は命。なんという痛ましいことでしょう。しかし、この3月に新造船なったそうで、おそらく感慨ひとしおであったのではないでしょうか。
昔はこうして木を組み合わせて船を造っていたわけですが、今はFRPなどで造られるようになりました。そのため職人さんがごくわずかになってしまい、しかも大変ご高齢の方ばかりなのでそうです。特に櫓をつくれる職人さんは、もう2名しか残っていないとか。
この和船がいかにして、建造されたかは、下記に出ています。

さて本日は、まず火おこしのサバイバル術から。木片とナタと、マッチ1本で火をおこすことにチャレンジします。誰が早くできるか。早い人だと2分くらいでできるのだそうですが、だいたいみなさん15分から30分くらいかかっていました。
朝倉所長は3番目に早く火をおこすことが出来ました。しかしそれは、昨年、やり方を教わっていたからです。ずるい。
さて、さきほどの和船で海へと漕ぎ出します。左右それぞれの櫓を使いながら進みます。畠山信さんの指導のもと、櫓を使って進んでいますが、これが非常に難しい。なかなか目的地へ到達できません。畠山さんが「左旋回!」と指示を出すと、舟は右旋回したりしていました。
畠山さんの本業の牡蠣の養殖場の見学。いかだに、たくさんのカキがつるしてあります。大震災後は、ものすごく成長が良かったそうです。おそらく海底が大きく撹拌されたことによって、海中に何かが溶け出したりして、海にも大きな異変が生じていたと思われます。おそらくあと数年は、こうした不規則な変動が起きるのではないでしょうか?
養殖のカキを熱心に見入る実習生。畠山さんが、ロープについているさまざまな付着生物についても解説しています。ホヤの仲間や、さまざまな海藻が付着しています。
このあと舟は九九鳴き浜に到着。ここは砂をふみしめるとキュキュと音がすることから、この名前があるそうです。長さ230m、幅15mほどの小さな砂浜です。鳴砂は学術的にも貴重で国の天然記念物に指定されているそうです。
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