丸の内セミナーがありました

京都大学丸の内セミナー

 このセミナーは、京都大学の研究所・センターで行っている最新研究に関する成果の発信、時宜を得た話題についての専門家による解説などを中心に、首都圏在住の社会人を対象とした「大人のための高度な教養講座」と位置づけ、企業にお勤めの皆様のご参加を念頭に置いて平日の夕刻から実施しています。
本セミナーの企画においては、産官学連携を重視する観点から「専門性、先端性の高い問題、タイムリーな話題」の提供を心掛けていますが、もちろん、どなたでも参加いただけます。

 

海洋には極めて多様な生物が棲息し、その種数は最大推定で1億種を越えるとされて、軟体動物が1番目、甲殻類を含む節足動物が2番目に多くの種が知られる。その中で軟体動物の貝殻を利用するヤドカリ類という甲殻類は、エビやカニを含む十脚甲殻類の仲間である。本講演ではヤドカリ類の天敵に対する特殊な防衛行動を紹介する。

巻貝が死ぬと中が空洞になり、それをシェルターとして利用するのがヤドカリである。この空殻は、フグなどの魚、タコ、ワタリガニなどのカニ類からヤドカリを守る。また巻貝の中に海水が保たれて外界とは異なる環境を提供し、水温の変化(潮の満ち引きなどの時)、水質の変化(塩分濃度、降雨、pH)、乾燥(潮が引いた時)等に抵抗力が増す働きをする。

ヤドカリには6つの科がある。ツノガイヤドカリ科は最も原始的で、ヤドカリの祖先であるエビに良く似た左右相称の体をしている。軟体動物のツノガイの空殻や海に流出した木等の植物、軽石にも入る。ヤドカリ科は潮間帯〜浅海域に生息し、主として巻貝の貝殻を利用するが石を利用する種もいる。貝殻にイソギンチャクをつけている種も多数いて、その刺胞毒は、ヤドカリの天敵であるタコや魚からヤドカリを守る。イソギンチャクはヤドカリの食べかすなどの、おこぼれを頂戴する共生関係にある。ホンヤドカリ科も潮間帯から浅海域に生息し、巻貝の貝殻のほか、木、カイメン、二枚貝の半片、スナギンチャクの群体などを利用する。オカヤドカリ科は陸上性で、カタツムリの貝殻などを背負うが、住宅難で洗剤のキャップなども使う。オキヤドカリ科は深海性で刺胞動物の群体を背負う。

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