三崎臨海ドレッジ調査

posted by KM

久々のせとブロ執筆です。

さる2月11-12日に、東大の三崎臨海実験所に行ってきました。第6回JAMBIO沿岸生物合同調査(ドレッジ調査)に参加するためです。
今回の調査は12-13日にかけて行われるのですが、13日に大学院の編入試験が瀬戸臨海で行われるので、12日の午後には三崎を発たなければならないという、なかなかの強行軍です。

実は私、三崎臨海に行くのは今回が初めて。卒研で筑波大の下田臨海にお世話になって以来、25年以上臨海実験所に関わっておきながら、この日本の臨海実験所原点の地に行く機会がなぜ一度も無かったのだろうと、我ながら驚きです。

最初というのは何事も緊張するもので、三崎の事務の方にアクセスについて詳しい情報を教えてもらっていたものの、若干の不安が残ります。と思っていたら、三崎口駅から実験所がある油壺に向かうバスが下田臨海の中野裕昭さんと一緒だったので、無事道に迷うこと無く実験所宿泊棟へ着きました。

午後5時過ぎに到着し、部屋に荷物を置いたら、まもなく交流会の時間となりました。

ビールをつがれているオレンジ色の服の人が、今回の調査のコーディネーター役の幸塚久典さん。いくつかの水族館や環境コンサルタント会社を経て、2009年から三崎臨海で技術専門職員(いわゆる技官さん)として勤められています。

実は私、2005年に隠岐の島にウミグモの採集調査に行ったことがあるのですが、その際に本当に偶然に、当時当地の環境コンサルタント会社の研究所にいた幸塚さんと出会いました。その後三崎に移られてからは、学会や所長会議などでお会いするたびに三崎訪問を勧められていたのですが、それがようやく実現したことになります。

翌日は昼から風が吹くとの予報。当初朝9時半の予定だった集合時間が6時50分に変更となり、それに備えて当然時間も酒量も控えめになるはずで、実際9時前には一旦、中締めとなりました。

その後、温泉に行く人、話を続ける人、いろいろ分かれつつ、明日に備えて少しずつ人数が減っていったのですが…。

幸塚さん、H大のKさん、K自然史博のSさんと私の4人は、結局2時近くまで飲んでおりました。大丈夫かなあと思っていたら案の定…(詳細は控えます)。

さて翌朝は、何とか時間までに船着き場にたどり着き、出航準備に取りかかります。

瀬戸から私と共に参加した千徳さん、北大ポスドクの角井さん、広大ポスドクの田中さんの姿が見えます。真ん中の黄色いカッパの人は、下田臨海技術専門職員の佐藤壽彦さんです。佐藤さんは私の下田での卒研の年に技官として採用された方で(年は私より大分上です)、下田での採集ではいつも本当にお世話になっています。
今回の調査には、彼らを含め総勢約20名が全国各地から参加しました。大部分の人とは、動物学会・動物分類学会・うみさわ会などで顔見知りではありますが、一緒に調査するのは初めてなので、とても楽しみです。

ほぼ予定通りの7時過ぎにいよいよ出航。船着き場は記念館(旧本館)の真ん前です。船(臨海丸)には、真ん中のボートを使って渡ります 。

この日の朝は海も概ね穏やか。前夜の交流会を引きずっている人や元々船に弱い人も数人いましたが、おかげで今回は船上では誰も死なずにすみました(でも若干一名、船に乗れなかった人が…)。

とにかく昼からは吹いてしまうので、時間がかかる700 mの採集は諦め、300 m前後を数回引くことになりました。

さすが相模湾。出航から20分ほどで水深300 m超の地点に到達し、早速ドレッジを下ろします。

着底後約10分曳いて引き上げ始めたのですが、途中張力計の針に不審な挙動が…。

引き上げると案の定、スリーブの部分でワイヤーが切れており、ン十万円のドレッジが、哀れ海の藻屑となってしまいました。
数百mの海の底ですから、もちろん運に左右される作業ではあるのですが、さすがにこういう事はそうそう起こることではありません。これは今回初参加の、私 and/or 千徳さんの日頃の行いかも…。

さすがにこれでお終いというわけにいかないので、慌てて実験所に戻り、替えのドレッジを積み込むと共に、あらかじめ船上から電話で呼び出しておいた業者さんが乗船し、破損状況を調べ応急処置を施します。

 修理も無事終わり、再び沖に出てドレッジ投下。
 今回は無事、中身付きで引き上がってきました。

200 m前後を2本曳いた所で、予報通り風が吹いてきたので早々に帰路につき、12時前には船着き場へと戻りました。

 早速篩いがけをした後、室内外に分かれてソーティング作業が始まります。
 どう見ても怪しい集団ですよね。

私もソーティングの最初の方だけ参加し、ウミグモを2頭だけ(最終的には3頭)ゲットしました。しばらくすると帰りの時間が迫ってきたので、ソーティングは早々に切り上げ、幸塚さんのご好意で記念館2階にある「展示室」を見せてもらう事にしました。

この展示室は、地元の三浦市との連携協定に基づき、海洋教育の目的で2012年に開設されたもので、120年を超える三崎臨海の歴史や活動について、コンパクトにうまくまとめられています。また年に数回、一般公開も行われています(室内の撮影は禁止です)。

展示室の整備や案内には、「東大三崎臨海実験所サポーターの会」というボランティア団体があたっているとのことです。このような地元との連携やサポーターシステムの導入、また「マリン・フロンティア・サイエンス・プロジェクト」という寄付システムの導入などは、瀬戸臨海としても今後大いに参考にすべきかと思います。

とここでタイムアップ。幸塚さんの用務にちゃっかり便乗して三崎口駅でおろしてもらい、白浜への帰路につきました。

今回の調査については、いずれJAMBIOのホームページでも紹介される予定です。

今回の三崎訪問は、滞在わずか24時間足らずという駆け足なものでしたが、研究交流、施設見学、ドレッジ作業見学等々大変有意義でした。わずかに採れたウミグモも、少なくとも1頭は個人的に未見の種のようです。

ドレッジ採集については、瀬戸でも200-300 m域を中心に今後力を入れていく計画があり、装備や作業について興味深く拝見しました。船の規模や装備、ドレッジの大きさなどは瀬戸のものとほぼ同じなので、作業の大まかな手順は当然同じになるのですが、細かい所ではいろいろと違いがあるようです。次回は瀬戸の技術職員と一緒に訪問し、技術交流を図る場を是非とも設けたいと考えています。

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