動物学会(各論その3)発表編

2013年9月26日
朝だ。目を開けたときにいきなり飛び込んできた見知らぬ天井に、一瞬ここがどこなのか分からなかった。
「あぁ、そうか」
私は今、岡山のネットカフェに居たんだった。体を起こすと少し全身が痛む。まぁネカフェだから仕方のない話なのだけれど。
外に出ると、晩夏の冷ややかな朝の空気が体を包み、重い体も少し軽くなった気がした。私と共に、どこか遠くで秋も目覚めた、そんな感じ。

バスに乗り込む。岡山大学行のバスに。今日からいよいよ始まる。何が?動物学会が。何が?発表が。いつ?今から。
動物学会一日目の今日は私が所属している研究室の発表も多い。

朝のシンポジウムでは、去年まで瀬戸臨海実験所にいた藤本心太さんが発表した。

小さい動物門:クマムシとコウラムシ
Two small phyla : Tardigrada and Loricfera
藤本心太Shinta Fujimoto1,2, 疋田努Tsutomu Hikida1 
(1京大・院理・動物,2日本学術振興会特別研究員DC)

午後の口頭発表からは、岡西政典さんの発表。

Astrodia属(クモヒトデ綱 : ツルクモヒトデ目)の分類学的再検討
A taxonomic review of the genus Astrodia (Echinodermata : Ophiuroidea : Asteronychidae)
岡西政典1○, 藤田敏彦2Okanishi Masanori1○, Fujita Toshihiko2
(1京都大学瀬戸臨海実験所, 2国立科博)
千徳明日香さんの発表。
オノミチキサンゴで認められる出芽の極性と螺旋構造
Polarity in budding and resultant spiral architecture of azooxanthellate colonial scleractinian Dendrophyllia cribrosa
千徳明日香1○, 江崎洋一2SENTOKU Asuka1○, EZAKI Yoichi2
(1京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所, 2大阪市立大学大学院理学研究科)
18:00~の関連集会にて、再び岡西さんが発表。
瀬戸臨海実験所での教育と研究における分類学の重要性
An important of taxonomy in studies and educations at Seto Marine Biological Laboratory 
岡西政典Masanori Okanishi (京大・瀬戸臨海)
ここで少し、岡西さんの発表の様子を紹介したいと思うのだが、私の説明能力で伝わるのかどうかいささか不安である。岡西さんの発表は凄かった。その一言に尽きる。いや、それを説明するのに、私の文才が追いつかないと言った方が正しいのかもしれない。
「つまりこういった研究課題を解決しなければならない訳です。」
「じゃあ、それをいつやるか?」
今でしょ!?











後の、「ドヤ顔」である。










2013年9月27日

朝だ。目を開けたときにいきなり飛び込んできた見知らぬ天井に、一瞬ここがどこなのか分からなかった。

「あぁ、そうか」
私は今、岡山のネットカフェに居たんだった。体を起こすと少し全身が痛む。まぁネカフェだから仕方のない話なのだけれど。
外に出ると、晩夏の冷ややかな朝の空気が体を包み、重い体も少し軽くなった気がした。私と共に、どこか遠くで秋も目覚めた、そんな感じ。

バスに乗り込む。岡山大学行のバスに。今日から……………..いいや、待て。動物学会は昨日から始まっている。湖の水面のように静かだった心がざわつき始める。バスの中で急いで大会予稿集をめくる。あった。やっぱりだ。今日は私が発表する日じゃないか。もはや私の心は湖どころではない。台風の直撃を受けた白浜の海である。堤防なんて軽々超えちゃうのである。今回が初めての口頭発表なのだ。そりゃ、超えちゃうのである。
私の発表は9:30から。今は8:40。おかしい。まだ時間ある。なのに。足が震える。手も震える。心臓の鼓動は、もはや暴れ馬である。吐き気がする。トイレに行きたい。…………….いや、これはあまりにおかしい。落ち着こう。とりあえず、ホットコーヒーでも飲んで落ち着こう。
やはり、温かい飲み物は落ち着く。少し震えもなくなったようだ。しかし、しまった。よりによってコーヒーを飲んでしまった。とりあえず、トイレに向かおう。
演者席に立つと、思いの外、緊張はなかった。すこぶる落ち着いて発表できた。本番に強いと言えば聞こえは良いが、恐らく発表前に緊張疲れしてしまったのだ。もうこれ以上できないというぐらいに緊張して、発表までその緊張がもたなかったのだろう。もしくはこれ以上緊張してしまうと死んでしまうから体がリミッターをかけてくれたのかもしれない。いずれでもよい、落ち着いて発表できたことは良きことだ。
フタツメイソウミグモAmmothella biunguiculata の生活史: 紀伊半島・伊豆半島の比較
Comparison of the life history of a sea spider, Ammothella biunguiculata in the Kii and the Izu peninsulas
望月佑一○, 宮崎勝己Mochizuki Yuichi, Miyazaki katsumi
(京都大学大学院理学研究科)
発表の後、空を見上げた。少しだけ、空が近づいた気がした。手をかざす。やはり空は遠いのだけれど。
今回の動物学会参加で得たものは大きい。沢山の研究。沢山の人々。沢山の議論。沢山の笑顔。沢山の緊張。沢山の…..出会い。
そのすべてに、きっとここでしか得られなかったものすべてに、私の三日間の感情を思いっきり込めて、この言葉で締めくくろう。

「感謝っ☆」
posted by 望月