ちょっと前になりますが、6月7・8日に筑波山麓のつくばグランドホテルにて開催された、日本節足動物発生学会の大会に行ってきました。
今回の参加者約50名の小さな学会ですが、名前から想像されるようにかなり濃い学会ではあります。この学会は、昆虫発生学の大家で長年筑波大学菅平高原実験センター長を務められた安藤裕先生を中心に設立されました。今年の大会で49回目です。
今回の発表題名は「フタツメイソウミグモ(ウミグモ綱:イソウミグモ科)の生活史:紀伊半島と伊豆半島の比較(予報)」。そう、この時期就活で大変なはずだった望月君の名代としての発表です。発表の方はまずまずうまくいき、望月君の顔に泥を塗ることは無かったものと自負しております。(発表している写真が無いのは残念)
私達の発表は19題のうちの一番最後。ウミグモは節足動物の中でも相当マイナーなので(今回は私達以外は皆「昆虫」!!)、この学会で発表する時は大抵一番最初か一番最後になります。
同様に動物学会でも、ウミグモのようなマイナー動物はメジャーグループの発表が続いた後に明らかにプログラム調整のために置かれることがままあって、メジャーグループのためのだだっ広い会場が、私の発表に切り替わるタイミングでいきなり寂しくなる経験を何度となくしてきました。今秋の動物学会で望月君が同じ目に遭わないか、今からとても楽しみ心配です。
この学会、一日目の夜に必ず「シンポジウム」があります。これは安藤先生の発案で、「シンポジウム」の元々の意味、すなわち(Greek symposion, from sympinein, “to drink together”) に沿って、ベテランと若手が酒を酌み交わしながら渾然一体となって様々に語り議論し合うというもので、発表よりもこちらの方が絶対学問の進歩に寄与しているはずです。
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「シンポジウム」の光景。いろんな所で、硬軟交えた様々な話が展開されています。 |
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ホテルから見た、つくば市街地方面(左側の明るい所)の夜景。私が筑波大に入学した30年前は、夜景はもっとシンプルでした。 |
安藤先生の持論は「一番偉いのは酒が飲めて研究が出来る人。酒は飲めないが研究が出来るのは、酒が飲めるが研究は出来ない人の下の3番手だ」というもの。果たして私は何番手に評価されていたのでしょうか。
先生は2010年に86歳でお亡くなりになりましたが、「シンポジウム」で、いろいろとご指導受けたことを懐かしく思い出します。先生は特攻隊の生き残りで何かと豪快な方でしたが、非常に優しく、いろんな人に慕われる先生でした。昆虫発生学に携わる弟子・孫弟子の数がそれを物語っています。
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2003年の「シンポジウム」にて。写っていませんが、日本酒をつがれている場面でしょう。私の容貌がいくつかの点で今とは若干異なるのには、突っ込まないように。 |
学会終了後はレンタカーで筑波大学周辺をうろうろし、感傷に浸りながら帰路につきましたが、何とその日の夕方、和歌山市で震度4の地震が発生し、特急が大阪南部の東貝塚で止まってしまいました。結局普通電車に乗り換え日根野→りんくうタウン、更にそこから南海線の振り替え輸送で、深夜12時近くにようやく和歌山市駅にたどり着きました。当然そこから先の足は無く、急遽和歌山市で一泊と相成りました。
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前泊したホテルから見た筑波山。手前左のドームはつくばエキスポセンター、右に立つのはH-IIロケットの実物大模型です。筑波らしいちょっとシュールな景色です。 |