環境

地理

瀬戸臨海実験所は、紀伊半島南西部沿岸、紀伊水道から太平洋に出る辺りの田辺湾口に位置しています。当実験所の名称は、創設当時の瀬戸鉛山村の名前に因んだものです。当実験所の敷地は、和歌山県白浜町の西北端にある番所崎の頚部の砂洲を占めており、北は田辺湾、南は鉛山湾に面しています。

田辺湾の周辺海岸の地形は複雑で、暗礁および小島が散在します。湾内水深は30 m以浅で、底質は岩盤・転石・礫・砂・泥と多様です。遠浅の砂浜や干潟はそれほど発達していませんが、湾奥には小規模な干潟があります。また、当実験所の管理する畠島があり、実習や研究に利用されています。

気候と沿岸環境

当実験所周辺(番所崎)の気候は温暖です。冬期の平均気温は約9℃まで下がり、雪は稀にしか降りませんが、強い北風がふきます。夏期の平均気温は約28℃まで上がり、南西の風がふくことがあります。雨量は6月の梅雨時と9、10月の台風シーズンに多く、普段は多湿ですが、冬期には乾燥します。

当実験所周辺の海域は黒潮分枝流の影響を強く受けており、特に冬期の水温は本州のなかでも比較的高いです。平均海水温は、冬期は約15℃まで下がり、夏期は約29℃に上昇します。年によって、また潮間帯や湾奥部など気温の影響を受けやすい場所では、冬期の海水温が13℃以下になることや、夏期に30℃以上になることがみられます。

番所崎の気温(℃)
番所崎の風速・風向(m/s)

塩分は、降雨の少ない冬季は34‰以上で、黒潮の来訪時に35%付近に上昇することがあります。夏は降雨の影響で平均33‰程度ですが、大雨が降ると一時的・局所的に10‰台にまで低下することもあります。

水族館開放式予備槽水温(≒番所崎の海面水温)
番所崎の海面塩分

潮位差は、大潮のときで1.4~2.1 m、小潮のときで0.6~1.1 mです。大潮干潮時の潮位は一般的に0~10 cmほどですが、最も潮が引くのは12~2月の深夜で、潮位-20 cmに達することがあります。一方、8月後半~10月前半はそれほど潮が引かず、大潮干潮時でも潮位は20 cmほどです。

白浜の最高・最低潮位の範囲

山本 善万(2012)瀬戸臨海実験所における気象観測データ:2006年-2011年[付表].瀬戸臨海実験所年報 25, 53–88.

Seto Marine Biological Laboratory (1976) Oceanographic data at the S. M. B. L., 1972. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory 22, 409–415.

Seto Marine Biological Laboratory (1974) Oceanographic data at the S. M. B. L., 1971. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory 21, 433–439.

Seto Marine Biological Laboratory (1971) Oceanographic data at the S. M. B. L., 1970. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory 18, 413–419.

*海水温は、京都大学瀬戸臨海実験所振興会水族館月報(1952~1967年)および瀬戸臨海実験所年報(1987~2015年)の各号にも掲載しています。

生物

暖海性あるいは南方系の動植物が特徴的です。紀伊半島を分布北限とする種も多く、また南方海域からの漂流もあるため、本州においては比較的多様性が高いです。当実験所で作成した「白浜の海岸生物観察ガイド」で白浜の海岸に良く出現する生物について確認できます。

大垣 俊一(2011)浅海生物相の長期変動-紀州田辺湾の自然史.136 pp,南紀沿岸生態研究室.