京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所は、大正11年(1922年)7月に瀬戸鉛山村から敷地を無償提供され、番所崎の桔梗平と呼ばれた地に、京都帝国大学理学部の附属研究施設として「瀬戸臨海研究所」という名称で池田岩治教授(当時)を中心として創設されたのが始まりです。日本では4番目、理学部系では東京大学三崎臨海実験所に次いで2番目に古い臨海実験所です。創設当時、京都大学関係者の海産動植物の研究、動植物学科学生の実習道場、中等学校の博物科教員のための臨海実習など、研究教育活動を目的として設置されました。
当実験所は、紀伊半島西岸の紀伊水道外域に面した田辺湾口に位置し、気候は暖流黒潮の影響を受けて温暖です。岩盤・転石・礫・砂・泥などの多様な底質と複雑な海岸地形とも相まって、周辺海域は豊富な生物相に恵まれています。当実験所から南西方向に約10kmほど船を走らせると、最深部が「富田海底谷」の縁に到達します。ここからは最深部に向け急激に落ち込み、文字通りの谷が存在しています。こういった海底谷には黒潮の強い流れや陸からの栄養源の流れ込みの影響による、独特な生態系の存在が期待できます。太平洋側においてもっとも種類に富んだこの地で研究することは学問はもちろんのこと、産業にも貢献するところが多いだろうとの予見により、諸所の海岸を検分の末、この場所が池田教授により選ばれました。
現在、当実験所は番所崎の敷地40,630m2と畠島実験地26,529m2で構成されます。周辺海岸の豊富な生物相は創設後100年以上経過した今も良く保存されており、所員によって系統分類学・生態学など自然史的な研究が継続されています。そのほか、学内外の臨海実習や外来研究者による研究活動にも多数利用されています。さらに、白浜水族館を併設して一般に公開しており、地元の教育機関や観光客に幅広く利用されています。