第46回 瀬戸海洋生物学セミナー

「ウミヘビと毒―その応用」
杜 祖健/Anthony T. Tu 名誉教授(Colorado State University, USA)

2017年4月11日(火)11:00〜12:00

海蛇はインド−太平洋のみに分布し、大西洋には見られない。主に熱帯・亜熱帯の海に生息するが、気温温暖化に伴い日本での海蛇は常に北上し、奄美大島より太平洋岸に沿って数年前は紀伊半島南岸で発見され、1年前に銚子沖で漁網中から見つかった。なお、海蛇はフイリッピンとソロモン群島の淡水湖にも例外的に存在する。

海蛇毒の購入はできないので、演者は自身で、太平洋では奄美大島、台湾、香港、フイリッピン、ボルネオ、タイ、コスタリカで、インド洋ではタイ、スリランカ、インド、パキスタンで採取し研究した。演者が主に海蛇毒とアメリカのガラガラヘビ毒の化学構造を調べた結果、両者には相似点が少なかった。

海蛇は今まで独立したFamily(Hydrophiidae)とされていたが、最近はコブラ科Elapidae中のHydrophinae亜科と取り扱われる様になった。事実、コブラ毒と海蛇毒は免疫学的手法で調べると、互いに似ていることが分かった。神経毒としてもアミノ酸配列にも相似点が多く、その作用も類似する。陸産のコブラ科のヘビ、例えばオーストラリアの毒ヘビはPresynapticタイプである。アジアの雨傘ヘビの毒にはPresyapticとPostsynapticの両方の神経毒を含む。コブラの神経毒はPostsynapticタイプの神経毒である。ウミヘビ毒は私の知る限り、みなPostsynaptic神経毒のみである。ウミヘビ毒とコブラの毒は、特にDisulfideの位置が同じであり、2次構造のみならず3次構造も大変似ている。従って、コブラ用の血清は海蛇の咬傷にも有効である。