第36回 瀬戸海洋生物学セミナー

「日本近海の高い生物多様性:Census of Marine Lifeの取り組み」
藤倉 克則 上席研究員(海洋研究開発機構)

2013年10月24日(木)10:00〜11:00

人は地球上の生物を利用して生きている。今、私たちにせまっている生物多様性問題は、人がそれぞれの生物が地球上で果たしている役割を十分理解せずに利用や開発を進めていることにある。海は、地球上で最も広大な生物が生息する場所である。海の生物と人との関わりは、食糧、医薬品、水質浄化、物質を循環させる機能、レジャーや観光といった生態系サービスを見ても非常に大きい。持続的に生態系サービスを享受するためには、どのような生物が、いつ、どこにいて、どのような生活をしていて、どのような機能をもっているかを知る必要がある。

日本は、四方を海に囲まれ古くから海を利用してきた海洋国家で、海の生物多様性や生態系が変化すると様々な影響を受けると考えられる。しかし、海は陸に比べ人の生活圏から離れているために調査できる機会が少なく、とくに外洋や深海の生物の情報は極めて少ない。そこで、世界中の研究者が協力しながら海の生物多様性を知ろうという目的で、2000年に国際プロジェクトネットワーク「海洋生物のセンサス Census of Marine Life: CoML」が立ち上がった。ここでは、CoMLの取り組み、特に日本のCoMLの取り組みからわかった日本近海の豊かさについて触れる。

CoMLでは、参加各国の海洋生物の種類の豊富さを解析した。日本近海の総種類数は、バクテリアからほ乳類まであわせると33,629種で、今知られている全海洋の生物種数は25万種の13.5%になる。日本の排他的経済水域の容積は全海洋の0.9%しかないにもかかわらず、13.5%の種類を占めることになる。同じような調査は、世界の25海域で行われ、これら25海域のうち種数では日本が最も多く、続いてオーストラリアが32,897となった。一方、「これから記録される予測種数(未報告種数)」は、少なくとも121,913種になり、これと33,629種をあわせた155,542が、現在日本近海に生息している生物の総種数になる。このような日本近海の生物多様性の高さは、環境のバラエティに支えられている。さらに日本は古くから食料を海に求めてきたため、諸外国に比べ海洋生物のデータは多くあることも要因となる。

日本は、現在も水産研究機関、独立行政法人、大学などで海洋生物研究に取り組んでおり、海洋研究船や深海調査船も保有する数少ない国で、海洋生物研究をしっかり進めることはもちろんのこと、50年後100年後の研究に役立つデータを残すことが重要である。