館長からのあいさつ

白浜水族館は和歌山県南西部の太平洋岸の白浜町に位置する水族館です。 白浜の周辺の海には北赤道海流に起源をもった暖かい海水からなる黒潮の分枝流が流れ込み、白浜は1年を通じて温暖な気候です。 そのため、温帯の生物の他、黒潮に運ばれた亜熱帯性の生物が生息し、独自の生物相を形成しています。 また、白浜周辺には岩盤、礫、砂、泥など日本の海岸を構成するほぼ全ての底質環境があり、そこにはそれぞれの環境を好む生物が生息しています。 白浜水族館には多種多様な海の生物を展示しています。 特にサンゴや貝、ウニ・ヒトデ・ナマコ、エビ・カニなどの海産無脊椎動物(背骨の無い動物)の展示に力を入れています。 動物は基本的な体のつくりなどの違いから約30の門(分類階級の一つ)に分けられています。 我々のすむ陸上にはこれらの内、わずかな数の門のみ見られますが、海には1つの門を除いた全ての門がみられます。 その多くは海産無脊椎動物です。白浜水族館では分類群ごと、あるいは生息環境ごとに分けて見やすく展示しています。 これらの展示を通して動物の体のつくりの違い、種や生態の多様性を実感していただきたいと考えています。
  白浜水族館に隣接する瀬戸臨海実験所では古くから海産無脊椎動物の研究が盛んに行われてきました。 白浜水族館は瀬戸臨海実験所(当時は瀬戸臨海研究所)への昭和天皇の御臨幸1周年を記念して1930年に一般公開し、2020年に開設90周年を迎えました。 現在、営業している日本の水族館の中では3番目に古い歴史ある水族館です。 これからも白浜水族館を大学教育だけでなく、社会教育や幅広い学校教育を含んだ生涯学習の場として活用していただければと願っています。

館長(瀬戸臨海実験所所長)

下村 通誉

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